第二章
動き出す想い出
私と坂田君を含む写真は文化祭の写真部展示の一部として飾られた。
学内有名な春海が撮った写真を展示されている講堂には引っ切り無しに生徒達が訪れていた。そんな中、学生に混じってスーツを着た大人の方々がちらほらと写真を見に来ては、付添いをしている写真部の顧問と春海を混ぜ展示前で話をしていた。
後で本人に聞いた所、春に県で行われる大会用写真を出展するための下見で訪れていたとのこと。
春海はその後、顧問と関係の方々ひとり一人へ挨拶廻りを繰り返し、一通り終わった頃には夕が落ち始め、ちょうど文化祭も佳境に入る時間だった。
この学校に来て1ヶ月が経ち、初めての学校行事の参加となった。
体育祭は私が転入前に終わっていたらしく、残る行事である文化祭への参加となった。
「ところで私達のクラスって何をするの?」
今まで気にしていなかっただけなんだろうけど、そういえば転校してきた時にはもう出し物が決まっていたのかそういう話し合いが一向に無かったのを思い出した。
「えっと確か喫茶店だったような?」
「うそ・・・・・・あれは嫌だな」
「なんで?」
「いや、前の学校でもうやっててさ。男共の目がいやらしくて嫌だった思い出がある」
「あれ?それは彩ちゃんがモテた。ということかな?」
「・・・・・・そういう意識はしたことなかったよ」
「ふ~ん。でもへいき平気。今回は大丈夫!!」
「ん?いや、何が大丈夫なのか意味が分からないし」
「え、・・・・・・ふふん。だってぇ、綾ちゃん綺麗だもん」
「いや、そこは関係無くない?」
「そんなことないって。美人なら男共も集まるし、それにほら、こんなに胸も大きいんだから」
そう言いながら春海は私の横から突然消えたかと思うと、背後から思いっきり胸をわし掴んできた。
あまりの春海から予想もつかないスキンシップに対し、私は普段出したことのない声を出してしまう。
そしてちょうど下校時間の為、その光景を同じ生徒の人達に見られてしまい、中にはいやらしい目でがん見している男達もいた。
「やっ、やめっぁっんっ・・・・・・」
私が吐息を漏らすのを楽しむかのように春海は周りの目の気にせずに揉み続けた。最初は抵抗したのだがなぜか身体が熱くなっていく感覚が身体の抵抗力を無くしていった。
「いいかげんにしなさい!!喫茶店は春海がしたかった事でしょっ」
同じくその光景を見るに耐えられなくなった花奈が春海の頭を勢いよく叩いた。
「うっ、さすがはなちん。ナイスツッコミ・・・・・・。だがっ!!」
若干、力を無くした春海はそう言いながらも私の胸元にはまだそのいやらしい手を離れず、引き続き私の胸を揉み直してきた。
その行動を止めない春海に花菜はもう一回頭を叩く。
今度はさっきよりも重く鈍い音が私の上から聞こえた。
春海も今のは効いたのか、私の胸から手を離しその場にしゃがみこんで頭を押さえている。
「はなぁっ、ありがとうぅ・・・・・・」
やっと開放された私はその安堵感のまま花菜へ思いっきり抱きついた。
「どういたしまして」
花菜は私を軽く抱きしめ直し、蹲っている春海から私を遠ざけてくれた。
「うぅ・・・・・。ひどいよ、はなちん。そんな思いっきり叩かなくても・・・・・・」
「春海がやり過ぎ!!」
「うぅぅ・・・・・・」
なんていうか・・・・・・普段大人しい花菜のこんな一面を見ると、まだまだ私の知らない花菜と春海がいる。
二人のやり取りを見ているとそんな築き上げた長い年月に、最近友達になったばっかりの私には入り込めない部分が多いことに少しだけ寂しいと感じた。